ブレンダ・ハロウェイというシンガーがいる。1960年代なかごろにモータウンに入り、「エヴリー・リトル・ビット・ハーツ」や、のちにBS&Tのカヴァーで大ヒットした「ユーヴ・メイド・ミー・ソー・ヴェリー・ハッピー」などのヒット曲がある。先ごろ、彼女のベスト盤がモータウンから発売された。ライナーノートでは、彼女自身がそれぞれの曲について語り、その多くがLA録音であることを明らかにした。これはほとんど公然の事実だったが、モータウンが発売した盤に具体的な状況が記録されたことの意味は、やはり重い。
ブレンダ・ハロウェイとともに働いたのは、のちにフィフス・ディメンションなどをプロデュースしたマーク・ゴードンと、冒頭でふれたフランク・ウィルソンである(「ユーヴ・メイド・ミー……」のライター・クレジットには、ハロウェイ姉妹とともに彼の名がある)。もちろん、ブレンダはライナーノートで彼らの仕事ぶりに言及している。
モータウンLAの問題については、たとえば、かつてはいくつか発言したドラマーのポール・ハンフリーが、なんらかの事情があって、この問題については口をつぐむようになったり、ハル・ブレインのように、いくつか重要な曲への言及を避けたりと、つねに歯切れの悪さがつきまとう*注6。
しかし、キャロル・ケイは、ここへきて新たな味方を得た。フランク・ウィルソンが長年の沈黙をやぶって、ついに実態を語りはじめたというのである。彼女は、なぜ彼がいまになって口を開いたのかはわからないといっている。
たしかに、人の心のうちはわからない。しかし、ブレンダ・ハロウェイが、モータウン自身が発売したCDで率直に事情を語ったことと考え合わせると、フランク・ウィルソンの翻心は、モータウン内部での事情の変化を反映しているようにも見える。それがなにかはわからないが、ひょっとしたら、キャロル・ケイの苦闘の日々はまもなく終わるかもしれない。そんな予感をいだいた。
おっと、いけない。ひとつ書き忘れるところだった。モータウンは素晴らしい音楽をたくさん生みだした。だれがプレイしたにせよ、どこのスタジオで録音されたにせよ、音楽があたえてくれる喜びにはいささかも変化はない。ウソを見抜こうと人々の証言をチェックしているときには、こういうことが精神のバランスをとってくれるものだ。

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