パティー・ペイジの多重録音

 レス・ポールに遅れること2年あまり、1949年12月にパティー・ペイジは、彼女のヴォーカルを4回重ねることによって"With My Eyes Wide Open I'm Dreaming"を録音し、ビルボード・ポップ・チャート11位にまでのぼるヒットを記録した。レーベルにはPatti Page Quartetと記されたそうである。レス・ポールによれば、このときのエンジニアは、近代録音エンジニアの父ともいうべきビル・パトナムだったようだ。
 "Lover"とは異なり、この"With My Eyes"には未来的感覚は皆無で、たんに完璧に声がブレンドされた(全員がリードシンガーのクローンなのだから、当然だ)美しいハーモニーがあるだけである。
 そしてその翌年の10月には、こんどはわずか2回のダビングで、かの"Tennessee Waltz"を録音し、ナンバー1となる。こちらはじっさいにSP盤のレーベルを見たことがあるが、Patti Page with Patti Pageというクレジットになっていた。クァルテットより、こちらのほうがシャレになっている。
 レス・ポールは、自分のスタイルを模倣されたことで競争心を刺激され、すぐさまこの曲をカヴァーしたが、およばなかった。まだ、彼とメアリー・フォードの"Tennessee Waltz"がチャートインしているあいだに、パティーを追い落とすべく、前の盤のセールスの邪魔になるからと嫌がる会社を口説き落として、"How High the Moon"をリリースし、みごとにナンバー1の座を獲得したのだった。本文にもどる